第2話 「やさしい」はずのアイアンで、なぜ飛距離が落ちたのか

前回、一般的には「難しい」と言われるBLUEPRINT Tが、他のアイアンより5ヤード以上飛び、しかも曲がらなかったというお話をしました。

今回のお客様は、以前はマッスルバックを使用していました。

その後、年齢のことも考えて、少し「やさしい」と言われるハーフキャビティへ変更されています。

ところが、少しずつ飛距離が落ち、方向性もぼやけてきた。

そして今回、再びマッスルバックであるBLUEPRINT Tを打ってみると、飛距離が伸び、方向性まで良くなったのです。

なぜでしょうか。

「やさしさ」とは何を助けることなのか

一般的に「やさしいアイアン」と呼ばれるクラブには、いくつかの特徴があります。

ヘッドが大きい。

ミスヒットに強い。

ボールが上がりやすい。

多少打点がずれても、飛距離が落ちにくい。

こうした性能は、多くのゴルファーにとって大きな助けになります。

だから「やさしい」と呼ばれます。

しかし、ここで考えてみたいことがあります。

その助けを必要としていないゴルファーにとっても、それは「やさしさ」なのでしょうか。

今回のお客様はクラブチャンピオンになるほどの腕前です。

芯に当てることをクラブに大きく助けてもらう必要はありません。

それよりも、自分が意図したようにクラブが動いてくれることの方が重要になります。

ここで「やさしさ」の意味が変わってきます。

操作性は左右だけではない

前回も少し触れましたが、マッスルバックの特徴としてよく使われる言葉に、

「操作性が高い」

があります。

操作性というと、

フェードを打つ。
ドローを打つ。

このような左右方向の球筋を思い浮かべることが多いと思います。

しかし、上級者がコントロールしているのは左右だけではありません。

高さもコントロールしています。

高く打つ。

低く打つ。

風の下を通す。

ピンの位置やグリーンの状況によって弾道を変える。

今回のお客様も、ボールを抑えて打つことを得意としています。

ここが今回のフィッティングを考える上で、大きなポイントになりました。

ヘッドが大きくなると何が変わるのか

マッスルバックからハーフキャビティへ変更すると、単純に「芯が大きくなる」だけではありません。

ヘッドの大きさも変わり、重量の配置も変わります。

当然、クラブヘッドの運動特性も変わります。

一般的にヘッドを大きくし、重量を外側へ配置すれば、慣性モーメントを大きくすることができます。

慣性モーメントが大きいということは、簡単に言えば、

ヘッドの姿勢が変化しにくい

ということでもあります。

これはミスヒットしたときには大きなメリットです。

打点が芯から外れてもヘッドがブレにくい。

だから方向や飛距離が安定します。

ところが、意図的にクラブの動きを変えたいゴルファーから見ると、少し違った意味を持つ可能性があります。

変わりにくいということは、変えようとしたときにも変わりにくい。

ここが重要です。

クラブに任せたい人と、自分で動かしたい人

クラブに弾道を助けてもらいたいゴルファーにとって、ヘッドが安定して動いてくれることは「やさしさ」になります。

しかし、自分で弾道を作ることのできるゴルファーにとってはどうでしょう。

自分はこう動かしたい。

この高さで打ちたい。

ここでは少し抑えたい。

そうした入力に対してクラブが素直に反応してくれることの方が、「やさしい」と感じることがあります。

今回、BLUEPRINT Tを打ったときに起きたことは、まさにこちらだったのではないかと考えています。

小さなヘッドだから「難しい」。

大きなヘッドだから「やさしい」。

それほど単純ではないのです。

BLUEPRINT Tで戻ってきたもの

BLUEPRINT Tにすると、他のモデルより飛距離が出ました。

そして曲がらなくなりました。

しかし、もう一つ重要だったのが、

弾道を自分でコントロールできることでした。

通常に打てば、しっかり高さが出る。

必要なら、その高さを自分で変えることができる。

これは、以前マッスルバックを使っていたこのお客様にとって、とても重要な性能だったのだと思います。

フィッティングを進めながら、私はお客様に確認しました。

ボールを抑えて打つことについてです。

すると返ってきたのは、

「抑えるのは容易です。」

という言葉でした。

この一言を聞いたとき、もう一つ試してみたいことが出てきました。

抑えることが容易なのであれば、もっと高さを出せる組み合わせにしてもいいのではないか。

ここから、今回のフィッティングはもう一段面白い方向へ進んでいきます。

そして、それが「30代の頃の飛距離が戻った」という結果にもつながっていきます。

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